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小島熱子歌集『りんご1/2個』

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小島熱子さんの第三歌集『りんご1/2個』(本阿弥書店)を読む。

季節感に満ちた歌が多く、読んでいてとても気持ちのいい歌集だった。

ブーツから急にサンダルとなる朝そらまめのやうにあしゆびは立つ
葉の隙にいまだをさなきあんずの実けふもわたしの石鹼が減る
箸置きにはしおく指のしづけさに春のゆふべはうすずみに昏れ
三月がスキップしながら縱いてくるバターナイフを買ひにゆく道

注)四首目の「縱」は歌集では足偏。私のMacでは出て来ず、すみません。


季節を感じる歌から四首。どの歌もどこか懐かしい感じがする歌だが、懐かしいだけでなく、一首目の「そらまめのやうにあしゆびは立つ」や、四首目の「三月」と「バターナイフ」の取り合わせなど、修辞としてとても新鮮だと思う。二首目の「あんずの実」の歌が一番好きかなあ。

自分の思いを声高に主張するような歌ではなく、世界にそっと寄り添ってゆくような歌。とてもリラックスして読めた一冊だった。

他には、次のような歌がいいと思った。

うすうすと眼窩のいたむ日の暮れにあすの下塗りのやうに風吹く
右の歯の痛みて左のみに噛む降りはじめたるあめも傾ぎて
通過する成田エクスプレスの果てのはてパリのパサージュはしぐれのころか
なんといふやはらかき声にいふものか幼の髪に触れて言ふとき
ついと柚子ひとつ捥ぎたるわが指が勲章のごとくしばらくにほふ




写真は汐入駅そばの「汐入萬菜」のゴーヤチャンプル。

石川美南歌集『裏島』『離れ島』

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4/28(土)、石川美南歌集『裏島』『離れ島』(本阿弥書店)の批評会に参加。中野サンプラザ。

批評会での議論は、連作の構成や設定などに集中していたように思う。

特に『裏島』は、登場人物などの設定や構成を確認しながら読まないといけない連作が中心になった歌集である。

そうした連作を丁寧に読み解いていくことが、石川さんの歌集を読む楽しみの一つである。

ただ一方で、そこのところが、ある種の読者にとってハードルになっているようにも思う。普通の歌集であれば、主人公は、第何歌集であろうが、ずっと同じ人物である。一方で、石川美南さんの作品は、短編小説的というのだろうか、連作ごとにどんな主人公が登場するのかを、確認しながら読まないといけない。連作ごとに設定の確認をしないといけないというのは、読者にとって、結構しんどいことなのではないだろうか。

そんなことを考えながら読んだ二冊である。

パネラーの一人の今野寿美さんが、一首一首の作品を中心に歌集を語ろうとしていたのが印象に残っている。

私も、どちらかと言えば、設定や構成を読むというよりは、一首一首の作品を味わいたいと思う。『裏島』『離れ島』には、次のようないい歌がたくさんあるのである。

『裏島』
川向きの窓は二センチ開かれてあくびのやうな風を入れをり
お呼び出し申し上げます体内にブルースをお持ちのお客様
方頰に楽器の影が落ちてゐてみんなみんないつか死ぬつて辛い
液体と気体を行き来するうちに恋に落ちたりするはずだつた
裸身並べ座つてゐたり温泉は光の畝を見に来るところ


『離れ島』
人間のふり難儀なり帰りきて睫毛一本一本はづす
窓枠に夜をはめ込む係にてあなたは凛と目を凝らしたり
地下足袋の足は浮きたり 高層の窓ガラス横へ横へ拭くとき
ご活躍はかねがね聞いてゐたれども 会へばアンダルシアのあかるさ
羽根ぶとん眉まで上げて眠る夜もわたしの足ははみ出してゐた




写真は横須賀中央「中央酒場」のまぐろのブツ。必ず頼む定番メニュー。絶品。

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