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「りとむ」2011年5月号

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「りとむ」の2011年5月号は、「緊急特集・同日同刻 -わたしの三月十一日」が掲載されている。りとむ会員82名による41ページにわたる特集である。一人半ページずつ、三月十一日の体験を小文に記録している。そのとき「りとむ」の会員たちは、どこにいて何を思ったのか。心に残った文章の一部を紹介したい。

里見佳保は青森県八戸市の自宅で、子どもを保育園に迎えに行く直前だったという。

地震がおさまってすぐ、家を出ました。保育園へ向かう途中、信号が全部止まっていました。これは大変なことになっている、と思いました。


椎名行雄は勤務先の茨城県庁で、こんな光景を目にしている。

廊下のエレベーターは開かれたままで瀧のような水が落ちており、階段を上った八階分室では天井の壁が落下していた。


岩内敏行は出張先の群馬県高崎市で、次のような叫びを聞いている。

部屋の中のホワイトボードは勢いよく傾き 、立っていられない激しさが襲った。免震構造のビルは大きく揺れ 、リアルに命の危険を感じた。揺れの最中に同僚が発した「このビルを信じるしかない」という悲痛な叫びが今でも耳から離れない。


新木マコトは、地震の瞬間の秋葉原を文語体の文章で記録している。

電話中微動来たる。不躾に切ること能わず。次第に横揺れ、隣のビルよりわらわらと店員、路上に逃れて中層を仰ぎ見る。自宅倒壊の危機を察し、犬を引きて一階店舗よりさながら脱出す。老朽化せるビル群、びしびしと鳴動。木造の自宅も然り。されど先年耐震補強を施ししかば、辛うじて倒壊を免れたり。


土井絵理は、「ただならぬ震動」を感じて、世田谷区の自宅を飛び出した。

真っ青な空を飛行機が一機ゆっくりと横切って行って、あああの飛行機に乗っている人達は、今この大地が割れても助かるのだな、と思いながら見上げていた。



印象に残った短歌も引いておきたい。詠草の締め切りは、震災前日の三月十日だったので、地震前の作品である。


サンセットブルーさみしいくれなずむインターネットに君の名を呼ぶ 高橋晃

「それイイねドコのエプロン?」「通販よ」くるりと回るロッカー室で 高橋千恵

てのひらのうへに何かがゐるやうなこころ持てあまし橋を渡れり 滝本賢太郎

悩める母は商店街で励まされおまけの唐揚げ抱えて帰る 土井絵理

幼きの腕に抱かれて注がれるあたたかな ああ雪溶かす雨 樋口智子

父の手は熱くも冷たくもなくてああこの人の娘わたしは 松山紀子

その鳥は今朝高円寺におりました待ちたいのならどうぞ座って 山口文子

夜よりも深い瞳の二十二時ああぬばたまの君と呼べたら 古賀ふみ

あのころとなにがちがうと言うのだろう フリーダム フリーダム 子供が走る 桂塁

老残のおもひしきりにきざすとき帽子目深に出でゆかむとす 杉下幹雄

お客様相談室の和嶋です。内線すればみな身構える 和嶋勝利

山うどの先のみどりに薄ごろも揚げて楤の芽よりも美味とす 今野寿美

トーストに蜂蜜を塗る単純にまず食べそしてそれから生きる 三枝昂之



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